テディベアのくれた プレゼント

作者ダイアリー

先日、わが家のテディベアから、
ちょっとしたプレゼントをいただきました。
「妙なことを言ってるわ。」
と思うかもしれませんが、まあ聞いてください。

わたしは20年ほど前、ネコを飼っていました。
ミケと洋猫のあいのこで、
アッシュのかかった不思議な色をした女の子でした。

人生初の待望のネコとの生活、
わたしはそれはもう、大切に大切に育てました。

わたしとそのネコはとても仲が良く、
わたしが家に帰れば玄関まででむかえきてくれ、
眠る時には小さな手をにゅっとのばし、
手をつないで眠りました。

わたしが落ちこんだ時は心配そうな顔でよりそい、
反対にネコが眠れなくてぐずる夜には、
2人でこっそり起き出して
ベランダから外をながめ、
「もう大丈夫。」と言うまで、
いっしょにすごしたこともありました。

ネコと人間は気持ちが通じるのだと教えてくれた、
大切な大切な存在でした。

それはもう20年前のこと、
その子はもうそばにはおりません。

そのかわりと言っちゃなんですが、
現在の「ペット不可」物件のわたしの家には、
クマやウサギのぬいぐるみがずらりと並んでおります。

わたしはぬいぐるみを手にすると愛着がわき、
手放せなくなってしまうので、
最近はもう新しいぬいぐるみを買わないようにしています。

思い入れのある子は、
わたしの童話のモチーフになったりもしています。
(ちなみにもも色のふわふわしたウサギが、その例です。)

テディベアが一番多く、
大きいクマ、小さいクマ、
ちゃ色のクマ、もも色のクマとそろう中、
際立つのは全長80㎝のすごく大きなクマです。

そのすごく大きなクマは日中太陽にあてておくと、
お布団の中でカイロになってくれるので、
寒い夜のだきまくらとしても重宝しております。

ステイホームで時間のあったころには
お風呂で全身を洗われ、
ポタポタとしずくを落としながら
ベランダにつるされたこともありました。

先日、このすごく大きなクマをさわっていると、
脚の長い毛の中に、なにかの塊を発見しました。
「米粒でもからまって、かたまったか?」
と思い、わたしはその塊をほじくり出してみました。

取り出した毛の塊を
すぐに捨てても良かったのですが、
なぜか中身が妙に気になって、
からまった毛をほぐしてみたのです。

すると、中から出てきたのは
あのわたしが大切に育てたネコの、爪の先でした。

細くとがった爪の先、
わたしが「痛そう」と不安になってなかなか切れなかったから、
伸びて長い毛にひっかかったのでしょうか。

すごく大きいテディベアは、
20年もの間、
ひそかにあの子の爪を持っていてくれたのです。

なんと奇跡的なプレゼント、
あの子がまたそばに来てくれたような、
うれしい気持ちになりました。

ちなみにネコの爪は、
もちろん切った方が良いようです。
にゅっと肉球から爪を押し出して
先端の白い部分だけを2ミリほど切りましょう。

テディベアのくれたネコの爪は、
小さな袋に入れられ完全保存されています。

こんなこともあるんだなあと、
うれしく思ったできごとでした。

               おしまい