つめたいうみに くらげがいっぴき、
およいでおりました。
あるとき くらげは、
じぶんのかさが まっしろであることに きづきました。
ほかの くらげたちのかさは、
あかや きいろ だいだい あおや みどりなど、
たのしげないろに みちています。
「どうして わたしの からだは、
こんなに まっしろなのだろう。」
そこで くらげは、
あかいくらげに ききました。
「そのあかいろは、なにで ぬりましたか。」
「はて。
いつのまにか そまっていたので、わかりません。」
くらげは、
きいろいくらげを つかまえて ききました。
「そのようなきいろは、だれに もらったのですか。」
「はて。
そんなことを きくものを、はじめてみましたよ。」
きいろいくらげは、
しんそこ ものめずらしそうに いいました。
くらげは、
とても まずしいきもちになりました。
あるひ くらげは、
じぶんのかさのうしろに
やぶれあなが あることにきづきました。
それは くらげが ちいさいときに、
りょうしんから はなれ、
はげしいしおに ながされて、
とがったいわに ひっかかったときに、できたものでした。
「そうか、わたしのいろは、
このあなから ながれてしまって いたのだな。」
くらげは、すこし ほっとしました。
くらげは さっそく、
みどりいろの かいそうをはりつけて、
やぶれあなを ふさぎました。
ですが、
いっこうに いろがたまるようすは ありません。
くらげは、こんどは、
「なにかのびょうきに ちがいない。」
とおもい、
おいしゃさんに みせにいきました。
「わたしは、
ほんとうは うつくしいいろなのですが、
かさに あなを あけられて、
いろが ながれてしまうのです。
なおしてもらえませんか。」
すると、
おいしゃさんは わらっていいました。
「これが びょうきだって?
こんなものは びょうきなんかではないさ。ははははは。」
くらげは、
はずかしくて はずかしくて、
いえに とびかえりました。
そして くらげは、
いかりくるって、りょうしんを せめたてました。
「どうして あんなに しおのはげしいひに、
わたしを ひとりにしたのですか。
だから わたしは、
かさが まっしろのままなのです。」
おかあさんは もうしわけなさそうに、
「すまなかったねえ。」
と、いいました。
くらげは、
しろいじぶんが はずかしくて、
おおきないわの かげにかくれて くらすようになりました。
あるひのこと、
はげしいしおに ながされて、
みたこともない かたちのくらげが、
しろいくらげの すむいわに ぶつかってきました。
「あぶないではないか。
かさがやぶれたら どうするのだ。」
くらげは、
おおきなこえで いいました。
「すまん すまん、
しおの なかを およいでいたのだ。
わたしは どうしても、
このしおの おわりが どんなふうか、
このめで みてみたかったのだ。ハハハハハ。」
しろいくらげは、
その とびこんできた くらげをみて、
とても おどろきました。
そのくらげのかさは、
あかや きいろ、あおに みどり、
ももいろと むらさきと ちゃいろ、
それから、
きんや ぎんまでもが まじりあって、
ぴかぴかに ひかりかがやいていました。
「きみは、きみは、
どうして そんなに かがやいているのだ。」
「さて。
そんなに ひかっているかい?
きづいたら、こんなふうに なっていたのさ。」
そして、
かがやくくらげは いいました。
「きみは、ひどく まっしろだねえ。」
「わたしは…、わたしは…。」
くらげは やっとのおもいで いいました。
「かさに あなを あけられてしまったので。」
すると、
かがやくくらげは、
くるりと うしろをむいて いいました。
「あななら、わたしも あいておる。」
かがやくくらげの せなかには、
みっつもよっつも、
やぶれあなが ありました。
「あなが あいていると、
しおが とおりぬけて、ふりまわされなくなるぞ、
ガハハハハハハハハハハ。」
くらげは、とうとう、
じぶんが まちがっていたことに きづきました。
「さて、
つぎは うみのうえの、
ひかりのはじまりを さがしにいこうかな。」
かがやくくらげが そういったとき、
またひとつ、
きらめくような きんいろのひかりが
ぽんと かさに うかびました。
しろいくらげは、
ようやく わかりました。
「わたしには、夢がなかったのだ。
ゆたかな夢が、わたしのいろをつくるのだ。」
そして くらげは、
夢をもちたいという 夢をもちました。
すると、
まっしろなかさに、
あわい ももいろのひかりが、
ぽんと ひとつ うかびあがりました。
おしまい
