創作童話13 「夢林檎の木」後編

童話

 

そこでウサギは、 
よいことを思いつきました。

すぐに台所へゆくと、 
おかあさんに はちみつを一さじもらい、
鉢のそばにおきました。

「じゃあ、これでどう?
ぼくが、毎日、
はちみつを一さじここにおくよ。
これで、おなかいっぱいになりませんか?」

はちみつの とびきりあまいかおりが
ぷうんとただようと、
くいつくし虫は一ぴき、また一ぴきと、
夢林檎の木をはなれはじめました。

そして、ついに虫たちぜんぶが
はちみつへ ひっこしをしてくれたのです。

「ぼうや、
とびきりあまいごはんを ありがとう。」
「ううん、ぼくも ありがとう。
毎朝、わすれずにおくからね。」

ウサギのちいさなむねは、
ほこらしいきもちで いっぱいでした。


そこへ、
おとうさんとおかあさんがやってきました。
「ぼうや、はちみつをどうしたの?」
「おや、その鉢はなんだい?」

鉢がみつかってしまったので、
ウサギの子は 思いきって、
じぶんの夢をうちあけました。

ふたりは はじめ、
とてもおどろいていましたが、
にっこりとわらっていいました。

「そうかい。
じゃあ、3人でそだてるというのはどうだ?」
「いいわね。
ぼうや、わたしたちにも お手つだいさせてくれる?」
「ほんとう?いいの?」

おとうさんはすぐに、
庭のまん中に おおきな穴をほってくれました。
そして おかあさんが、
根をきらないよう 
鉢からうまく夢林檎の木をとりだし、
うえかえてくれました。

ウサギは うれしくて たのもしくて、
なんだかもう、
ねがいがかなったようなきもちでした。


夢林檎の木は、
庭のまん中で お日さまをいっぱいあびて、
すぐに 元気をとりもどしました。

みきは 日をおうごとにふとくなり、
ひろげた枝は、もう やねまでとどきそうです。

やがて、
うすもも色のちいさな花が、
空をおおうほど 一面にさきほこりました。

花のあまいかおりが 風にのってながれだすと、
森のなかまたちが、
ウサギの庭にあつまるようになりました。

「ウサギくん、きれいな花がさいたね。
なんの木?」

「じつはね、つよくなりたくて、
女神さまの夢林檎の木をそだてているの。」

ウサギは もう、 
夢をかくさずに はなせるようになっていました。

すると、 
森のみんなも じぶんの夢をはなしはじめました。

リスくんとネズミくんの夢は、
ウサギとおなじで、おおきくつよくなることでした。

ネコさんの夢は、
魚たちのようにおよげるようになること。

カメさんの夢は、
ウサギのように はやくはしれるようになること。

そして、
ずっとこわいと思っていたライオンくんにも、
こわがられずに たくさんの友だちをつくりたいという、
ひみつの夢があることを知りました。

夢林檎の木は いつのまにか、
みんながあつまる 目じるしになっていました。

やがて、
風が すこし すずしくなったころ、
枝は つやつやした赤い実を たくさんつけました。

ウサギと森のなかまたちは、
さっそく みんなで枝にのぼり、
あまずっぱい林檎を ほおばりました。

おかあさんは、
ウサギたちがとってきた林檎の実を、
しっとりした じまんの生地にはさんで、
こうばしいアップルパイを焼きました。

みんな みんな おなかいっぱい。
たべきれなかったアップルパイを
やまほど おみやげにもらって、
だいまんぞくで かえってゆきました。

まだ 
金色の実は できていませんでしたが、
ウサギはもうじゅうぶんに しあわせでした。


すると、
なごりおしそうに枝にとまっていた
一わの小鳥が、ウサギにはなしかけました。

「ウサギくん、
早く夢が かなうといいですね。」
「うん、ありがとう。
小鳥さんの夢はなんですか?」
「わたしにも 夢林檎のタネがあったら、
タカさんやワシさんのように、
どこまでもとんでいける つよい鳥になりたいです。
でも、むりですねよね。
だって わたしには、
林檎の木をせわする手がないですから。」

そういうと小鳥は、
家族のために、くちばしでもてる
一きれだけのアップルパイをもらい、
うれしそうにかえってゆきました。



つぎの朝、
ウサギが目をさますと、
木のまん中には、
とうとう きらめくような金色の夢林檎の実が、
たったひとつ なっていました。

ウサギは おとうさんとおかあさんと3人で、
その宝物のような実を、
たいせつにたいせつに もぎました。

「これで、夢がかなうわね。」
「ぼうやが、がんばったからだよ。」
おとうさんとおかあさんは、
ウサギをほめてくれました。

ぴかぴかの夢林檎の実は、
この世のものとは思えないほどうつくしく、
ウサギのむねは うれしさでいっぱいでした。



ところが、

なぜか ウサギの子は、
その金色の実を、
すぐに たべることができませんでした。

そして、
かんがえにかんがえたあげく、
おとうさんとおかあさんにいいました。

「ぼくは この金色の実を、
小鳥にあげることにするよ。
ぼくの実は、もう一どそだてればいい。
おとうさん、おかあさん、
手つだってくれたのに、ごめんなさい。」

それをきいて、
ふたりは うれしそうにいいました。
「わたしたちも、それがいいと思うわ。」


ウサギは すぐに森へいき、
かがやく金色の実を小鳥にあげました。

小鳥はおおよろこびで、
ウサギの上を くるりくるりととびまわり、
いく度もおれいをいって 
家族のもとへかえってゆきました。

ウサギは、
実のなくなった夢林檎の木を見て、
すこしだけ ざんねんなきもちになりました。
でも、
こころの中は しあわせでいっぱいでした。


その時です。

夢林檎の木から 
まばゆい光があふれだしたかと思うと、
ふたたび女神があられました。

  ちいさな子 ちいさな子

  よく金色の実をそだててくれました

 
ウサギはいいました。
「女神さま、でも、あげてしまったんです。
もう一度、タネからそだてなくっちゃあいけません。」

それをきくと、
女神は ウサギが目をあけていられないほどの、
まばゆい光をはなちました。

  ああ いとしい子 いとしい子

  とうとう りっぱなつよいものに なりましたね


女神の光は、
ウサギと夢林檎の木をつつみこみました。
すると、木はたちまちの内に、
かがやくような金色の実でいっぱいになりました。

 
  もう ねがいは かなっているのではないですか


女神は やさしくそういうと、光の中へきえてゆきました。


それから、
ウサギの夢林檎の木には、
いつまでもいつまでも 金色の実がなりつづけました。

じつは ウサギは、
金色の実がなるたびに、
ぜんぶ なかまにあげていたので、
まだ じぶんは ひとつもたべていません。

でも、
みんなの うれしそうなかおをみていると、
なんだかとっても しあわせなのだそうです。


                     おしまい🍎