「没頭ソーイングの効果とは?」

作者ダイアリー

じつは わたくし、
子どものころからお裁縫が大好きです。

小学生のときは、
カラフルなフエルトで
小物をたくさん作りました。

中学生になると、
少しレベルがあがりまして、
スウェーデン刺繍なんかに挑戦しました。

スウェーデン刺繍って ごぞんじですか?
先のまがった めずらしい形の針で、
専用の布の 表面の織り糸をすくって
刺繍糸をとおし、
美しいグラデーションにする刺繍法です。
完成すると織物みたいで、
かなりの達成感があるのです。

もちろん 劇団でお芝居をしていたころも、
担当は衣装係でした。

素人の趣味レベルでしたが、
みんなのカラフルな衣装を、
劇団のはぎれを使って、
いかにコスパよく作れるかに、
情熱を燃やしておりましたね。
「タダで1着できたよ~。」
とかいって。

まあ、それはずいぶん昔のことで。

現在のわたしの家にある ハンドメイド作品は、
正方形の布をはりあわせただけの、
直線縫いで作れるパッチワーク作品が多いのです。

それには、理由があります。

いろいろあって お芝居からはなれたころ、
わたしは「強い声がでない」ことに
とても なやんでおりました。

生活のほとんどの時間を使って、
一日中 からだ作りのことを考えていましたが、
解決策はみつからず、
完全に行きづまっておりました。

なやみが ド・ピークになっていたころは、
レッスンに行くたびに、
「今日も かわらなかった。」
と、がっくり おちこんでしまったものです。

ときには、
くやしくてなきながら家にかえり、                                                      
たちなおれないまま、
翌朝をむかえることもありました。

それが日々つみかさなって、
からだは とてもおもくなっていたのです。

ですが、ふしぎなもので、
あまりにおちこんで、それが一周まわると、
なんだか、
ちがう考えに たどりついてしまうことってあるものです。

いつものように
おちこんで 家にかえったある日、
ふと思ったんですよね。

「あれ?もしかしたら、
こうやっておちこむことで からだが緊張して、
さらに声がでなくなってるんじゃないの?」

と。

練習に行った結果、おちこんで、
それでさらに声がでなくなっていたら、
なんか本末転倒じゃないですか。
レッスンだってタダじゃないんだし。

なんだか、とつぜん、
おちこんでいるのが、
ちょっと ばかばかしくなったんですよね。

そりゃあ、いきなり
「よっしゃ、なんでもできるぞ~!!」って、
超ポジティブまでには もどれませんよ?

でもね、
レッスン前よりマイナスになっちゃうんだったら、
いっそ、
レッスンのことを ぜんぶわすれて
「ゼロ」になったほうが、
なんぼかマシなんじゃないかなあ、って。

そこで わたしは、
おちこんだきもちを
積極的にわすれる活動をさがしはじめたんです。

そこで思いついたのが、「没頭ソーイング」です。

わたしは縫い物をはじめると、
一回 あたまの中が まっ白になる傾向があります。

それで、
ちょっと時間の感覚がなくなって、
おわったころには、
「あれ、なんだっけ?」と、
前のできごとを 昔のことのように
かんじてしまうことがあるのです。

それを、使ってみよう!と思いました。

そこで、わたしは、
おちこんでかえった日には、
なんでもいいから、
とにかく布と布を 縫いあわせることにしたんです。

縫い方は、
もちろん「直線縫い」一択です。

直線縫いというのは、
みなさんも 小学校の家庭科でならったであろう、
布に針を「いれて・だして・いれて・だして」を
えんえんとくりかえす、最大限にシンプルな縫い方です。

この記事の冒頭の画像で、
ねこちゃんがチクチクと縫っている、
あれですね。
(ちょっとわかりにくいかもしれませんが…。)

作る作品も 正方形の布をつなぎあわせて
グラデーションにするだけの、
ごくごくかんたんな パッチワークにすることにしました。

没頭ソーイングをするときは
なにせ 大変おちこんでいますので、
本でやり方を確認するとか、
そうゆう めんどうなことはしたくないのです。

第1作目は、
とりあえず「ほしい」と思っていた
ざぶとんカバーにきまりました。

そして、ものの数日でできあがりました。

つぎは、
キッチンマット、トイレマット、
少し大きくなって 布団カバー、シーツ、
それから トイレットペーペーカバーにいたるまで、
とにかく直線縫いだけで作れるパッチワーク作品が、
ぞくぞくと ふえつづけていったのです。

最終的には、
当時のワンルームの部屋のサイズにあわせた、
2メートルのカーペットも
手縫いでしあげました。

そのころには、かえり道に、
「今日はドラマを見ながら、
カーペットのあの部分をしあげよう~。」
と、ワクワクするようにまでなっており、
もう単純に、
たのしいだけの趣味になっていましたね。

日ごろ、
「趣味に 時間とお金を使っている場合じゃない!」
と思ってしまう おかたいタイプだったので、
「好きなだけ縫い物していいよ!」
と、自分にOKをだした、
そんな贅沢時間になっておりました。

そして、
たくさん布を縫いあわせていく中で、
不思議なことに きづきました。

右から針を刺すと、
当然、針は左に出ますよね。

その針を 左にしゅーっとひっぱると、
布の縫い目から針まで 糸でつながった、
ひとすじの まっすぐな線ができます。

また
布も糸と糸を織ったものなので、
よーくみると すきまがあります。

針がそのすきまに きちんととおると、
ひっかかることなく
スルーっと ぬけていってくれるんです。

まるで、
針にも「とおるべき道」があるようです。

それで
その糸の一直線が とどこおりなくできるたびに、
あたまから よけいなものがなくなって、
ココロの軸が ととのっていくようにかんじるのです。

そして、
それをくりかえしていると、
おわるころには、
「まー、いっか。今日もよくやったか。」
と、思えているんですね。

わたしの没頭ソーイングには、
そんな効果があったのです。

最近は、
「編み物セラピー」なんかの話題を
よく耳にします。
手芸用品のお店でも、
毛糸のコーナーが すごくひろくなっていますね。

ちょっとしらべてみたかぎりなのですが、
編み物は 脳を瞑想のような状態にみちびくらしいです。
編み物はやったことがありませんが、
なんだかナットクです。

心理学的にも、
「没頭すること=今の自分に集中すること」なので、
自律神経のバランスをととのえる手段と
考えられているようですよ。

没頭するって、すごいですね。

ちなみに最近のわたしは、
あたまが もやもやしているときに、
あえてやる予定のことを やらないで、
「大人のぬりえ」に没頭することもあります。

えのぐのほそい筆で、こまかーい枠の中を
ぴったりもれなくぬっていると、
これまた
あたまの中が まっ白になっていくのです。

一生懸命にとりくんでいるのに、
うまくいかなくて
おちこんでしまうこともあります。

今の自分なら、
あのころのレッスンのつみかさねが、
今の自分につながったことがわかります。

でも、おちこみすぎると
からだをわるくしてしまいます。

くるしくなってしまう前に、
みなさんも ぜひ、
30分でもいいので、
ご自身の好きなことに 没頭する時間を
ためしに作ってあげてみてください。

たのしくて、いいことがあったら、
もうけものだと思いませんか。